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神戸地方裁判所竜野支部 昭和37年(ワ)63号 判決 1962年12月10日

原告 立正信用組合

被告 金本恒和 外三名

主文

被告らは、各自、原告に対し、金二〇万円、並びに、これに対する昭和三七年九月一日以降完済に至るまで、金一〇〇円につき一日金七銭の割合による金員を支払え。

訴訟費用は、被告らの連帯負担とする。

この判決は、仮に執行することができる。

事実及び理由

原告訴訟代理人は、主文第一項と同旨の判決、並びに、仮執行の宣言を求める旨申し立て、請求の原因として、「原告は、被告金本恒和に対し、昭和三六年八月二一日、金二〇万円を、利息・金一〇〇円につき一日金四銭五厘、返済期日・同月三一日、支払遅滞のときの損害金金一〇〇円につき一日金七銭の約束で貸し付け、他の被告三名は、即日、右返済債務につき保証人となり、主債務者と連帯して、支払の責に任ずべき旨を約した。しかるに、債権者は、昭和三七年八月一八日に至り、被告金本恒和から、右貸金に対する同月三一日までの約定利息及び遅延損害金の支払を受けたにすぎない。よつて、本訴により、被告らにおいて、各自、原告に対し、右貸金二〇万円、並びに、これに対する昭和三七年九月一日以降完済に至るまで、金一〇〇円につき一日金七銭の約定割合による遅延損害金を支払うべき旨の判決を求める。」と述べた。

被告らは、口頭弁論の期日に出頭せず、陳述すべき事実を記載した答弁書その他の準備書面も提出しないから、民事訴訟法第一四〇条により、本訴請求原因事実は、被告らにおいていずれもこれを自白したものとみなすべきである。そして、右事実によれば、原告の請求は、理由があるから、これを認容することとし、なお、訴訟費用の負担につき同法第八九条、第九三条第一項但書、仮執行の宣言につき同法第一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(なお、本件は、山崎簡易裁判所が昭和三七年(ロ)第六三号事件につき同年八月二一日発した支払命令に対し、被告らが仮執行宣言前適法な異議申立をなした結果、支払命令の申立の時において当裁判所に訴の提起があつたものとみなされる事件であるところ、被告らは、当裁判所の裁判所書記官が本件の記録の送付を受け、第一回の口頭弁論期日の呼出が了した後、昭和三七年一一月二一日、右異議の申立を取り下げる旨の書面を当裁判所に提出したことが、記録によつて明かである。しかし、支払命令に対する異議の申立が取り下げることを得るものかどうか、また、右取下が認められるとして、その可能な時期は何時までかについては、争が存するところであり、十分な検討を必要とする。そして、当裁判所は、支払命令に対する仮執行宣言前の異議に関する限り、本件の事案に見られるように、既に簡易裁判所における異議の適否に関する判断(民事訴訟法第四四一条)を了し、訴訟記録が地方裁判所の裁判所書記官に送付されている以上、督促手続は、もはや終了し、原告の請求の当否は、通常の判決手続によつて裁判されることが確定しており、かかる訴訟手続の段階に入つた後にあつては、督促手続の復活をもたらすところの異議取下を有効になし得ぬものと考える。右説示と反対趣旨の判例(大審院昭和一〇年九月一三日決定・民集一四巻一六〇八頁)には賛成することができない。これが、前示異議取下書の提出にもかかわらず、口頭弁論手続を施行し、本判決をなす理由である。)

(裁判官 戸根住夫)

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